プレス加工について 

一口にプレス加工といっても、たくさんの加工方法があり、製品によってどのプレス加工が必要なのかが異なります。自社の製品に最適なプレス加工を把握することで、製作コストを抑えたりクオリティを担保したりすることが可能です。

今回ではプレス加工の特徴や種類、加工方法など詳しく解説します。

目次

  1. プレス加工とは加工物を圧着して行う加工のこと
  2. プレス加工の特徴と他の加工との違い
  3. プレス加工の主な種類
  4. プレス加工で使われる用語
  5. プレス加工を用いて作られる製品
  6. プレス加工で必要とされる金型とは

これだけは知っておくべきプレス加工のポイント

  • プレス加工は、加工物を金型に圧着して金型の形に変形させる加工方法のこと

  • 長期的に量産する大量受注する部品などはプレス加工を選ぶと生産性が上がる

  • 家電製品などの私達の生活に欠かせない物にプレス加工したものが使われている

プレス加工とは加工物を圧着して行う加工のこと

プレス加工とは、加工物を金型に圧着(プレス)して金型の形に変形させる加工方法です。英語では「press work」もしくは「stamp work」といいます。外から圧力を加えることで、製品の加工し変形させたり組み合わせたりする作業のことで、塑性(そせい)加工の一種です。

プレス加工の特徴と手作業で加工する製品との違い

プレス加工には、金型、加工物、プレス機械の3つが必要です。金型に工作物を挟んでプレス機械に乗せます。そうすることによって、金型の形に変形した製品を作ることが可能です。

金型、加工物、プレス機械の精度が製品の品質や生産効率にも影響します。プレス加工での生産を始める前は入念なチェックが必要です。

このような加工用の機械は、一度セットした後は手を加えることなく自動的に運転が開始します。また、特殊な資格が必要になることが少ないため、人件費が削減しやすいのが特徴の1つです。

プレス加工は大量に生産できるため生産性が高い

プレス加工は、製品を1度の加工で大量に生産できるため、生産性が非常に高いのも大きなメリットです。また、軽かったり小さかったり薄かったりする製品にも対応できるため、汎用性がとても高いといえます。

他にも、加工後に出るくず(スクラップ)が少ないので、加工材が無駄にならず効率的に使用できます。

手作業で加工する製品は、担当者によって品質にばらつきがでやすいものですが、プレス加工は、作業の質を一定に保ちやすい加工方法なので、検品作業の負荷を軽減できます。

プレス加工は金型によって決まった形のものしか作れないので、自由度が低い

プレス加工には、成形できる形状が決まっているので自由度が低いというデメリットがあります。そのため、製品によっては事前に計画していた形状で商品を作れず、設計変更が必要となることもあります。

また、プレス金型や機械を動かすには専用のシステムを作る必要があるので、巨額な初期費用や期間がかかります。そのためプレス加工は、小ロットや受注生産ではなく、長期的に量産する大量受注する部品に多く使われています。

プレス加工の主な種類

プレス加工は、いくつか加工方法に分かれています。それぞれ詳しく説明します。

せん断加工

せん断は、加工材を切断するための加工方法です。製品の基となる材料から、必要な大きさや形に材料を切断します。素材にはサイズが決まっており、大きいものをそのまま利用して加工すると手間が増えてしまいますが、素材を切断してから加工することで、無駄な加工を減らしてコストを削減することが可能です。

抜き加工

抜き加工はせん断加工の一種で、材料から不要な部分を打ち抜く加工方法です。加工材から丸や四角などの必要な形状を型取りします。

身近な例では、クッキーの型抜きが同じ原理です。クッキーの生地から抜き型を使い、生地を抜き取る工程は、抜き加工とほぼ同じものです。複雑な製品の場合、型抜きが必要になるケースが多いです。

曲げ加工

曲げ加工とは、材料を目的の形に曲げる方法です。曲げ加工は、V字やL字、Z字など加工機や金型によってできる形状を変えることができます。製品に合うよう、事前に形を変更することで、無駄なコストが発生するのを防ぎます。

絞り加工

絞り加工とは、凸の形(パンチ)により凹の形(ダイ)を動かすことで、継ぎ目が無いなく空容器を作る加工方法です。身近なものでいうとお椀やコップなどに近い形を作ることができます。台所のシンクも絞り加工を採用している製品の一つです。

絞り加工は絞りの回数に限界があり板厚が厚いほど加工の難易度が高くなっていきます。また、プレス金型の成形精度によって仕上がりが異なる可能性があります。そのため特に薄い板厚のものに多く採用される加工法です。

鍛造加工

鍛造加工とは、溶かした金属を金型に流し込んで固める加工方法です。金型などの加工コストがかさみますが、他の加工方法とは違い、形の制限がなく比較的自由度が高いと言えます。曲げ加工や絞り加工が難しい材料や、形状に対し採用されます。

プレス加工でよく使われる用語

プレス加工について話をする際によく使われる専門用語を知っておくと、現場とのコミュニケーションがスムーズに進むことも多いでしょう。以下では特にプレス加工時に生じる現象に対する専門用語をご紹介いたします。

専門用語 詳細  
そり 材料に曲がりが生じる現象
かえり 材料を切断した際にできる小さいまくれ、また「バリ」ともいう
しわ 加工時に圧縮応力によって材料にできる波状の模様
割れ 材料の一部分が底抜けしたり、曲げ部分にひび割れが発生したりする現象

プレス加工を用いて作られる製品

工場内でプレス加工により作られた製品は、どんなものに使われているのでしょうか。代表的なものをいくつかご紹介します。

自動車

日本の自動車は、柔軟かつ多彩な生産技術と高い機能を持ち合わせています。また日本で作る自動車の車種は、海外と比べるとても多く、またたくさんの機能をもっているのも特徴的です。その自動車のドアから小さな部品まで、多くの部分がプレス加工によって実現されています。

家電製品

テレビやエアコン、冷蔵庫などのボディや内蔵された部品は、プレス加工されているものが多いです。短い期間で多くの部品を作ることができるプレス加工の特徴を活かし、さまざまなデザインの製品が作られています。

硬貨

日本の硬貨もプレス加工で作られています。1円から500円まで、硬貨によって異なった模様や数字が付けられています。

プレス加工で必要とされる金型とは

プレス加工に必要なものとして「金型」をあげていますが、具体的に金型とは一体どんなものなのでしょうか。

金型とは?

金型の間に材料を入れて、荷重を加えることで素材を変形させます。金型には丸いものから凹凸があるものまで様々あり、全く同じ形の製品を比較的簡単につくることができるため、金型さえ作ってしまえば工数とコストを大幅に抑えてたくさんの商品を生み出すことができます。

金型は安定した品質・低コストの実現が可能

金型が必要なのは、同じクオリティの製品を短い時間でたくさん作るためです。生産業では、製品を作る際に「品質」「コスト」「納期」のQCDの共存求められます。プレス加工は、金型を利用することでこれら3つを補うことが可能です。つまり、金型を利用することで、品質を安定させ、一つ一つの製品を安価に、素早く作成することが可能です。

プレス加工の種類

プレス加工技術は、機械加工には欠かせない技術であり大きく分けて4つの種類あります。

今回はその4種類をわかりやすい加工実例と併せて紹介します。

単発型

工程が独立しているため、単独の製品のみ使用。人が手作業で材料の「装入」「取り出し」を行う。1回のプレスで1つの製品を作る。

順送型

いくつかの工程に分かれており、順番に加工されるもの。1回のプレスで複数の工程が進む。材料は自動的に連続で供給される。

トランスファー型

同じプレス機内でいくつかの工程に分かれており、各作業ごとに独立した型を使う。1回のプレスで1つの工程が進む。材料はプレス機が自動で流す。

ロボット型

同じプレス機内で各工程が独立しており、型が並列に並ぶ。1回のプレスで1つの工程が進む。材料はプレス機が自動で流す。

 

まとめ

プレス加工がどのような加工方法なのかのほかにも、特徴、種類などを紹介しました。